好きになるには理由があります
「美味しいですっ、このチキン南蛮丼とお刺身っ」
「そうか。
それはよかった」
とデッキのテーブルの向こうから陽太が微笑んでくる。
いやいや……。
なんでそんなやさしげなんですか。
リラックスするどころか、逆に緊張してしまうではないですかっ、と深月は思っていた。
あれから二人で釣りをしたり、チキン南蛮丼を買いに行ったりして、お昼ご飯になった。
「呑まないのか?」
と陽太が訊いてくる。
「いえ、船長が呑まないのに、私だけ呑むとか」
と言うと、
「だから、船長やめろ……」
と陽太は言ってくるが。
「だって、今は船長じゃないですか」
と言って深月は笑った。
「もうちょっと時間が欲しいと思ってた」
なにも入っていないグラスを前に陽太が言ってくる。