好きになるには理由があります
 深月は黙って、彼の注いだワインを飲み干す。

 深月がグラスを置くのを待って、陽太は言った。

「そうだ。
 俺はお前を抱いてない」

 そう陽太は認める。

「だから、本当はお前の側に居る必要はない。

 だけど……側に居るのに理由が必要か?」

 だが、ああ、と陽太は深月を見つめて言ってきた。

「理由ならあるか。

 お前が好きだ――」

 でも、と陽太は続ける。

「でも、お前の側に居るのに、お前を襲ってなきゃいけないのなら、今すぐ襲う」

 いやいやいや、結構ですっ、と深月は引いた。
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