好きになるには理由があります
「……何故、拒否する」

「な、何故でしょうね」

 理由はないです、と逃げ腰になりながら深月は言った。

 だが、そのまま陽太が見つめているので、
「こ、怖いからですかね?」
と言ってみた。

「怖くはない」
と言い切る陽太に、

 いや、あなた女になって襲われたことあるんですかっ、と深月は思ったが。

 陽太は深月の視線がよそを向かないようガッチリとらえ、暗示のように言ってくる。

「怖くはない。

 お前が俺のことを好きなら、怖くはないはずだ」

 深月は、ぐっと詰まった。

 怖いと言えなくなってしまったではないか……。
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