好きになるには理由があります
 


「おはようございますー」
とその日も深月は総務を覗いた。

 四月、ピカピカの新入社員たちが入ってきて、総務にも新人さんが入った。

「あ~、私もようやく後輩ができるところだったのに~」
と深月が総務のカウンターでもらすと、

「でも、あんたが後輩指導してるところ、全然想像できないんだけど」
と由紀が言う。

「いいじゃない。
 ずっと杵崎さんにこき使われて~」
と也美がおかしな文句をつけてくる。

「よくないって。
 仕事中は相変わらず、容赦ないし」

 神楽団の仲間なんだから、もうちょっと手加減してくれても、と思う深月に、総務に来ていた沙希が、

「深月、またコンパやってよ。
 杵崎さんにも頼んで」
と言ってきた。

「あ~、杵崎さんは来ないかもですよ」
と深月が言うと、

「なにそれっ。
 彼女できたっ?」
とみんなが勢い込んで訊いてくる。
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