好きになるには理由があります
 白を基調とした寝室はまったく見覚えがない。

 広いベッドで、まるでホテルの一室のようだが、絶対違う。

 だって、微妙に揺れてるし、丸い窓の外がっ。

「海っ!?」

 陽太が枕元のリモコンを押すと、天井に台形の窓が現れた。

 真っ青な空が見える。

「そういえば、この船はもしや、いつも私が自転車で追いかけて走ってるやつ……」

「そうだな。
 いつも疑問に思ってたんだが。

 何故、お前は俺の船の横を猛スピードで走ってるんだ」

「いや……抜けないかな、と思って」

 なんとなくだ、なんとなく。

 陽太は渋滞を嫌って船で通勤している。

 優雅だな、と思いながら、こちらも渋滞が関係ない自転車なので。

 深月はいつも、湾岸沿いの道を陽太の船を追いかけて走っているのだ。
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