好きになるには理由があります
食事のあと、深月は社殿の回廊に座っていた。
あの日、陽太と見上げた星空をひとり眺めて。
すると、清春がやってくる。
黙って隣に座った。
「……あったかくなってきたね」
「春だからな……」
しばらく沈黙があった。
やがて、清春が口を開く。
「深月、あいつで後悔はないのか」
「今はないなー。
でも、たぶんきっと、この先もないよ」
と言ったあとで、深月は清春を振り返った。
「夫婦ってさ、すごいよね」
そう言いながら、深月はみんなの居る母屋の灯りを見る。
「赤の他人と一生一緒に暮らすとか。
……血のつながりでつながってるわけじゃないから、気持ちが冷めたら、いくら大事にしてくれてても終わりなんだろうなとか思うと、ちょっと怖いけど」
と言うと、清春が、
「俺なら血もつながってるから大丈夫だぞ」
と言ってくる。
「うん……。
いや、それはそれで揉めたら後を引きそうなんで」