本当に私のこと好き?
この道だと慶太の家に向かってるはずだ
慶太も私が抵抗しないのがわかったのかグッと掴んでいた手を緩めて優しく繋ぎ直した
何も話さずただ黙って二人で歩いた
思ったとおり、慶太の部屋に連れていかれて玄関に入った瞬間抱きしめられた
「りか、」
聞きなれない掠れた声が何だか焦っている様にも感じて何も言えない
宙に浮いた手は触れることを戸惑ってしまう
慶太は私に触れられることを望んでるのだろうか
「りか、俺のこと嫌いになった?」
「…………」
嫌いになった?
聞きたいのはこっちだ
いやいや、慶太は最初から好きではなかっただろうから"嫌いになった?"とは違うか
私は…………
今、この瞬間も抱きしめてくれる腕も鼓動も全て愛しくて仕方がない
辛くて別れたいはずなのに
それなのに…………慶太はズルい
「もう、応えてくれないの?
もう、俺なんて飽きた?
何で、何も言ってくれないの?」
何だか、腹が立ってきた
はっきり言って、その台詞は私が言いたい
でも、いつも私が聞きたいことにも誤魔化して教えてくれない
何も言ってくれない
何も言うなと口を塞がれ
言えないように身体を繋げてしまう
私に愛人になれとでも言うのだろうか
ただの、身体だけの付き合いになれと言うのだろうか
従順な彼女が欲しかっただけ?
まさか、私から別れを言われると思ってなくて急に惜しくなったのだろうか