都の剣〜千年越しの初恋〜
午後になるまでに、負傷者は半数を超えた。救護にスクナビコが懸命に動いているが、人手が足りず、怪我人だけがどんどん増えている状態だ。
「……大変!」
怪我をしたお雪を連れてきた沙月は、目の前で苦しむ岩の姫神・イワナガ姫の手をそっと包み、呪文を唱える。すると、イワナガ姫の傷がかなり癒えた。
「ありがとう、サシャ様……」
イワナガ姫が優しく微笑む。沙月も、「いえ、私より葉月の方がきれいに治せます」と微笑んだ。
しかし、手が足りていないのは事実なので、沙月は次々と怪我をした神々に術をかけていく。怪我は完成には癒えないが、スクナビコの負担はかなり減るだろう。
「ありがとうございます!」
スクナビコに頭を下げられ、沙月は誰かの役に立つ喜びを感じながらまた戦い始めた。
悪霊と動物霊の数は朝よりもずっと減ったため、神々たちはヤマタノオロチを中心に攻撃していく。振り落とされ地面に叩きつけられても、光線を受けても、尻尾で攻撃されても、噛み付かれても、攻撃をし続ける。