都の剣〜千年越しの初恋〜
神々たちも、妖怪たちも、沙月と葉月も、全員が笑顔になった。

都への帰り道は、みんな足取りが軽かった。



ヤマタノオロチに勝利し、都に帰った次の日、飲めや歌えの宴が城で行われることになった。

その日の朝、沙月は赤地に様々な色の花柄の着物に着替え、ある場所へと向かう。

胸は緊張し、何度も沙月は深呼吸を繰り返す。しかし、足を止めることはできない。

「イザナギ様、イザナミ様……」

沙月は、イザナギとイザナミの部屋の前で声をかける。中からはすぐに「何だ?」と返事が返ってきた。

「……少し、お話をしたいと思いまして。お時間、大丈夫ですか?」

沙月と葉月は宴が終わったらすぐにこの世に帰ることになっている。今しかゆっくり話せないと沙月は思ったのだ。

「入れ」

イザナギの声に、沙月は「失礼します」と言い部屋に入る。部屋の中はどの部屋よりも豪華なものとなっていた。

「サシャ」

美しい白い着物を着たイザナミが、そっと沙月を抱きしめる。

「ヤマタノオロチを封印してくれて、ありがとう。……幸せに生きなさい」
< 131 / 138 >

この作品をシェア

pagetop