都の剣〜千年越しの初恋〜
「ごめん……。僕ら妖怪は、神々の教育を受けてこの世に行っている。神様を裏切るなんてできないよ」

キングの申し訳なさそうな声も、沙月には聞こえない。

沙月の目の前が、真っ暗になった。



葉月の裁判から早三日。沙月はずっと自室へ引きこもったまま過ごしていた。

気を抜けばすぐに裁判を思い出し、沙月はずっと泣き続けている。妖怪たちに裏切られたことが何よりもショックだった。

いくら前世がサシャだと言われても、沙月にとってサシャは他人だ。前世だったからといって特別な感情があるわけではない。

「サシャ様、お昼ご飯は召し上がりますか?」

襖の向こうから、心配げに侍女が訊ねる。沙月は「いらない」と言って布団にくるまった。

沙月は、あの裁判の後から水以外ほとんど何も口にしていない。そして、妖怪たちが来ても部屋から出ることも会話すらもほとんどしていなかった。

「……もうこれ以上、傷つくことなんてないよね……」

沙月の重いため息が広がる。神社の家に葉月と帰りたい……。その思いは、日に日に強くなっていた。
< 66 / 138 >

この作品をシェア

pagetop