都の剣〜千年越しの初恋〜
イザナギは、「お前はサシャだ。神条沙月ではない」と言って舞や茶道の稽古をさせようとする。イザナミは、「まだ混乱しているわよね」と優しく微笑み、沙月が今こうしていることを温かく見守っている。

神社の家には、もう戻れないのだ。そう思うと沙月はまた涙がこみ上げてきた。

何度目になるかわからない涙を流していると、ドタドタドタと大きな足音が響いてくる。沙月は何事かと顔を上げた。

スパンッと勢いよく襖が開く。三日ぶりの光に、沙月は目を細めた。

「サシャ様!お話ししようよ〜!!」

襖を開けたのは、月の形の髪飾りをつけたかわいらしい女の子だった。



あの世にいる神々は、毎月のように会議がある。大きな会議室に神々が集まり、あの世の様子やこの世にいる妖怪たちの様子を報告する。

議長はいつもイザナギが行なっていて、その隣にはイザナミがいつも静かに座っていた。

今日は会議のため、イザナギは会議室に向かって歩いていた。その時、「イザナギ様!大変です!」と山伏のような格好をした神がイザナギの前に現れる。風の神・シナツヒコノカミだ。
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