都の剣〜千年越しの初恋〜
ツキヤという男性も、サシャという少女も、沙月には見覚えも聞き覚えもない。それでも、目を覚ますたびに、胸に懐かしさが広がるのだ。

時計を見ると朝の五時。いつも沙月はこの時間に起きる。

「…支度をしなきゃ!」

沙月がこの時間に起きるのには、大きな理由があった。



沙月はパジャマから白衣と赤い袴姿に着替える。そう、神社の巫女が着る衣装だ。

沙月の家は、神社をしている。祀っているのはアマテラスオオミカミ。

沙月は神社の巫女として、朝早くから境内を掃除したりしている。ちなみに沙月はまだ高校二年生だ。しかし、彼女は友達にも言っていない秘密がいくつもある。

沙月が外に出ると、真夏だというのに雪が降っていた。

「うわぁ…!きれい!」

それに驚くことなく沙月は笑う。それはこの雪を降らせている人物が誰なのか知っているからだ。

「葉月!おはよう!」

沙月が声をかけると、雪を降らせていた白衣に青い袴姿の男子が振り返る。彼は宮野葉月(みやのはづき)。沙月の家に居候している沙月と同い年の男の子だ。高校も同じクラスである。
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