都の剣〜千年越しの初恋〜
きっとずっと一緒に今までいたのに、急に引き離されることになったからだろう。沙月はそう考え、気持ちを整理しようとする。

その刹那、ずっと前を向いていた葉月が沙月を見つめた。二人の視線が重なる。

まるで初めて会った時のように、沙月は頰を赤くし、慌てて目をそらした。しかし、葉月は沙月を抱き寄せ強く抱きしめる。

「は、葉月!誰か来たら……」

言葉とは裏腹に高鳴り続ける心臓に、沙月は改めて葉月のことが好きなのだと自覚する。

「見られてもいい……。このままでいさせろ」

葉月の声は少し震えていた。沙月も葉月の背中に腕を回し、葉月の気持ちに応える。

葉月の心臓の音に沙月は安心する。数分間、二人は抱きしめ合っていた。

「……俺ら、めちゃくちゃお邪魔じゃない?」

「こんな状況だなんて知らないよ!」

「えっと……あの……」

廊下の曲がり角の方から、ひそひそと声がする。妖怪たちの声だ。

あの裁判の後、沙月は妖怪たちとまともに会っていない。というより、会うことを避けていた。しかし、今ならーーー。
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