都の剣〜千年越しの初恋〜
深夜、みんな眠っていて辺りは静かな闇に包まれている。結界を張ってあるため、見張りなど必要ない。

沙月はあの世に来てから、サシャとツキヤの夢を見なくなった。代わりに、ごく普通の夢を見られるようになった。

その日見たのは、葉月との結婚式の夢。沙月が憧れているものだった。

葉月は黒い袴を着ていて、沙月は白い着物を着ている。幸せそうに二人は見つめ合っていた。

妖怪たちや互いの家族が祝福する中、二人は誓いの盃を交わす。その指には銀色に輝く指輪ーーー……。

「な、何だお前らは!!しっ、しっ!あっちへ行け!!」

オモイカネの大声で沙月は目を覚ます。隣で眠っていたお雪たちも目を覚ましたようで、体を起こした。

「夜中だっていうのに、何であんなに騒いでんだ……?」

火影とひとめがブツブツと文句を言う。その時、朧が「沙月!大変だよ!」と言い姿を現した。それと同時に、「沙月、起きているか?」と慌てた様子の葉月がテントの外から話しかける。
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