クール王子ととろける溺甘♡同居
「小山さん」
「……っ、」
聞いたことのない、希夜くんの低い声。
その声にもちゃんと優しさが感じられるから、余計胸が痛くなる。
「小山さんっ」
少し歩いて救護室のある棟を出ると、希夜くんが足を止めて、もう一度私を呼んだ。
「二見って、小山さんが前に話してくれた人?」
彼に顔を向けることができないまま、後ろ向きで頷く。
「っ、なんで、いるって教えてくれなかったの?小山さん、あいつのせいで辛い思いしてきたんだよね?」
「……ごめんなさい。言い出すタイミングがわからなくて」
「それでも……昨日だって、夜会えたじゃん。それに、あんなことがあったんだから、もっと警戒しなきゃ。なんで2人きりになんてなるの?保健係なんて他にもいるし……」
悲しそうな希夜くんの声。
希夜くんの善意を踏みにじるつもりなんてこれっぽっちもない。
だけど、希夜くんに甘えっぱなしじゃダメだと思ったのも事実だ。
私の問題だから、私と二見くんの問題だから、こうやって再会して話ができた以上、向き合わなきゃって。