初恋のキミに約束を
出会い~20年前~
午前授業を終えて下校途中に、彼女と初めて会った。何やら公園の辺りが騒がしい。
「チビ、退けよ」
「お前、邪魔」
ランドセルに真新しい黄色いカバーを着け、5、6人の一年生の集団が見えた。
裕一は四年生だったが既に150センチは超えていたので、チビはお前達も一緒だろ・・・などと思っていた。
「ダメ、お兄ちゃん達ネコちゃんの嫌がる事してたから、あっちへ行って」
一年生にお兄ちゃん達と言ってるって事は、それよりも小さい子か・・・しかも、女の子の声だ。
そう言えば、裏の老夫婦の所に小さな女の子が越してきたって母さんが言ってたっけ。
「おい、チビ共お前達の方が邪魔」
俺の声にビクンと、その場の一年生達は跳ねた。
その向こうに両手足を大きく拡げて、涙目になった大きな瞳を向けている萌香を見つけたんだ。
心臓が一瞬、バクンとなった。
そんな動揺を必死に隠して、冷静に一年生達に対応する。
「一年生は集団下校だったはずだけど、何で公園に居るの?担任の先生は、知ってるのかな?」
上級生に叱責されて、一年生達はクモの子を散らす様に退散した。
「もう大丈夫だよ。キミはもしかして、都築さんちの子かな?」
俺はしゃがみ込んで、女の子と目線を合わせる。
少し警戒しているのか、涙目を上目遣いして小さくコクンと頷いた。
「あのお兄ちゃん達がネコちゃん達に、意地悪してたの・・・」
彼女の後ろには、ダンボールに入った黒猫と白猫の仔猫が居た。
「・・・捨て猫みたいだね、キミは猫を飼えるの?」
「わかんない・・・お家に連れてってあげたいけど、おじいちゃんに聞いてみないと・・・」
俯き加減に呟いた。
「おじいちゃんに?お父さんとか、お母さんじゃないの?」
「パパも、ママも死んじゃったから居ないの・・・おじいちゃんと、おばあちゃんだけ・・・」
「そっか、おじいちゃん飼っても良いって言ってくれると良いね」
「・・・うん」
やっちまった。自分より幼い子の地雷を、これでもかと踏んじまった。
気まづいわ。
「仔猫達は俺が運んであげるよ。都築さんちの裏に家があるから、俺が一緒におじいちゃんに頼んであげる」
俺の言葉に、パァーっと花が咲いたみたいな笑顔が広がった。
「名前、何て言うの?俺は裕一」
「萌香」
「じゃ、萌香ちゃんお家に帰ろ」
「うん!」
それから、萌香の家に二匹の仔猫が住み着いて、俺は都築さんの家にお邪魔しては、萌香と仔猫の世話をした。
元々、都築さんのお爺さんは俺の祖父と友人で、そういった環境もあり兄のように、萌香と過ごしていた。
ある日、学校から帰ってくると萌香が玄関先でうずくまっていた。
「萌香、どうしたの?」
「おじいちゃんとおばあちゃんの帰りを待ってるの・・・」
「家の中で待ってれば良いのに、こんな所で寒く無い?」
俺は自分が着ていたジャンバーを脱いで、萌香を包んだ。
「お家で待っててもパパとママは帰ってこなかったから、おじいちゃんとおばあちゃんが帰ってくるまで、ココで待ってる」
萌香の両親は外出先で、事故に巻き込まれて亡くなったんだった。
可哀想に、きっと不安なんだな。
その時、俺は何かに突き動かされた様に、この子を守ることが使命なんだと思った。
「じゃ、俺もココで一緒に待っててあげる。萌香は一人じゃないよ。俺がずっと、一緒に居てあげる。萌香を一人になんかさせない」
「ほんと?」
「約束する」
「ハリせんぼん?」
「うん。指切りげんまんな」
「うん、指切りげんまん」
それから二年が経ち、中学に上がった俺は、それなりに忙しく・・・萌香との接点が無くなってしまった。
「チビ、退けよ」
「お前、邪魔」
ランドセルに真新しい黄色いカバーを着け、5、6人の一年生の集団が見えた。
裕一は四年生だったが既に150センチは超えていたので、チビはお前達も一緒だろ・・・などと思っていた。
「ダメ、お兄ちゃん達ネコちゃんの嫌がる事してたから、あっちへ行って」
一年生にお兄ちゃん達と言ってるって事は、それよりも小さい子か・・・しかも、女の子の声だ。
そう言えば、裏の老夫婦の所に小さな女の子が越してきたって母さんが言ってたっけ。
「おい、チビ共お前達の方が邪魔」
俺の声にビクンと、その場の一年生達は跳ねた。
その向こうに両手足を大きく拡げて、涙目になった大きな瞳を向けている萌香を見つけたんだ。
心臓が一瞬、バクンとなった。
そんな動揺を必死に隠して、冷静に一年生達に対応する。
「一年生は集団下校だったはずだけど、何で公園に居るの?担任の先生は、知ってるのかな?」
上級生に叱責されて、一年生達はクモの子を散らす様に退散した。
「もう大丈夫だよ。キミはもしかして、都築さんちの子かな?」
俺はしゃがみ込んで、女の子と目線を合わせる。
少し警戒しているのか、涙目を上目遣いして小さくコクンと頷いた。
「あのお兄ちゃん達がネコちゃん達に、意地悪してたの・・・」
彼女の後ろには、ダンボールに入った黒猫と白猫の仔猫が居た。
「・・・捨て猫みたいだね、キミは猫を飼えるの?」
「わかんない・・・お家に連れてってあげたいけど、おじいちゃんに聞いてみないと・・・」
俯き加減に呟いた。
「おじいちゃんに?お父さんとか、お母さんじゃないの?」
「パパも、ママも死んじゃったから居ないの・・・おじいちゃんと、おばあちゃんだけ・・・」
「そっか、おじいちゃん飼っても良いって言ってくれると良いね」
「・・・うん」
やっちまった。自分より幼い子の地雷を、これでもかと踏んじまった。
気まづいわ。
「仔猫達は俺が運んであげるよ。都築さんちの裏に家があるから、俺が一緒におじいちゃんに頼んであげる」
俺の言葉に、パァーっと花が咲いたみたいな笑顔が広がった。
「名前、何て言うの?俺は裕一」
「萌香」
「じゃ、萌香ちゃんお家に帰ろ」
「うん!」
それから、萌香の家に二匹の仔猫が住み着いて、俺は都築さんの家にお邪魔しては、萌香と仔猫の世話をした。
元々、都築さんのお爺さんは俺の祖父と友人で、そういった環境もあり兄のように、萌香と過ごしていた。
ある日、学校から帰ってくると萌香が玄関先でうずくまっていた。
「萌香、どうしたの?」
「おじいちゃんとおばあちゃんの帰りを待ってるの・・・」
「家の中で待ってれば良いのに、こんな所で寒く無い?」
俺は自分が着ていたジャンバーを脱いで、萌香を包んだ。
「お家で待っててもパパとママは帰ってこなかったから、おじいちゃんとおばあちゃんが帰ってくるまで、ココで待ってる」
萌香の両親は外出先で、事故に巻き込まれて亡くなったんだった。
可哀想に、きっと不安なんだな。
その時、俺は何かに突き動かされた様に、この子を守ることが使命なんだと思った。
「じゃ、俺もココで一緒に待っててあげる。萌香は一人じゃないよ。俺がずっと、一緒に居てあげる。萌香を一人になんかさせない」
「ほんと?」
「約束する」
「ハリせんぼん?」
「うん。指切りげんまんな」
「うん、指切りげんまん」
それから二年が経ち、中学に上がった俺は、それなりに忙しく・・・萌香との接点が無くなってしまった。