初恋のキミに約束を
再会 ~萌香side~
田貫部長に声をかけられて、デスクから顔を上げると部長の後ろに懐かしい顔を見た。
(裕くん・・・だよね?)
萌香の記憶にある裕一は小学生のままだが、大人の男性になっても面影を残してる。
当時は眼鏡はしていなかったが、その頃からインテリ系のイケメンオーラがあった。
桜葉一族の経営するこの【さくら堂】に入社した時から、顔を合わせるのは時間の問題だとは思っていたが。
会長であり、お祖父ちゃんの親友である功お爺さんとはちょくちょく顔を合わせてる。
裕くんのお父さんの大智小父さんとは、入社前に顔合わせ済みだった。
「どうぞ」
来客用のカップに入れた珈琲を出す。いつの間にか疎遠になってしまった裕くん。
びっくりするぐらい身長も伸びて、カップを持つ手も大きくて・・・昔は良く私の頭を撫でてくれたっけ。
「・・・うん、美味い・・・」
意外そうに、目を見張る裕くん。
「そーだろう、モカちゃんの珈琲は私の癒しなんだよ。桜葉部長も偶に飲みに来てよ、イケメンさんが居ると、ウチの女の子達も喜ぶし、ワハハ・・・」
困ったような、曖昧な表情で頷く裕くん。
田貫部長に自慢して貰ったけれど、私の取得なんてお茶汲みくらいだ。
田貫部長はパパの大学時代の後輩で、入社する前から奥様と二人、何かとお世話になっている。
会社でのお父さんみたいなひとだ。だから、多少の身内贔屓が入っていると思う。
裕くんの近くに居たいけど、仕事も有るし、後ろ髪引かれる思いで自席に戻る。
「都築さん、さっき事務の佐藤さんが頼んだファイル用意出来てる?」
「あっ、青山さん。わざわざ取りに来てくれたんですか?」
「うん、俺が使うやつだから、ついでだよ」
「営業さんは忙しそうなので、こちらからお渡しに行こうと思ってたんですが・・・」
「喫煙所に行ったついでだからさ、都築さんは気遣いさんだね。良い奥さんになりそうだなぁ」
さすがさくら堂ナンバーワンの営業マン、
サラッと誉める。
私は赤くなっているであろう頬を押さえて、どうしたらいいのかわからず愛想笑いで誤魔化す。
男の人は少し苦手。
特に青山さんの様に、容姿も実力も兼ね備えて自信に溢れているような人は・・・。
「都築さん、今度ウチの連中と飲み会しようよ。佐藤さんも参加するし、どう?」
「仕事中に女性を誘うのは感心しないな」
「桜葉部長!珍しいですね、総務に用事だっんですか?」
あからさまなお誘いをどうやって回避しようか戸惑っていると、裕くんが割って入ってくれた。
裕くんの後ろで、田貫部長がうん、うんと頷いている。
きっと、裕くんにそれとなく頼んでくれたのだろう。
いつもさり気なく助け船を出してくれる。
お誘い自体は迷惑という訳では無いのだが、同期で友人の佐藤花菜美ちゃんの想い人である青山さんなのが事の他、都合悪い。
「都築さん、珈琲美味しかったよ。ご馳走さま」
「え?都築さんの入れた珈琲飲んだんですかぁ?、良いなぁ・・・ズルいっす部長」
「田貫部長の気遣いでな。青山、今日は内勤なのか?」
青山さんに見えないように、後ろ手で戻るように合図してくれる。
小さく会釈してデスクに戻った。
何だか、小さい頃に戻ったみたいに胸の辺りがホッコリした。
「わざと、青山さんの注意を引いてくれたんだ・・・変わらないな」
「モカちゃん、どうしたの?」
秘書課主任の月野優子さん。
綺麗で、優しくて仕事のできる先輩だ。
同期の安井祥子ちゃんの指導係でもある。
田貫部長を筆頭に、総務部では殆どの人が私を「モカちゃん」と呼ぶ。
「営業一課の青山さんに誘われたんですが、桜葉部長に助けてもらいました」
「青山くんも懲りないわね・・・まあ、裕一が間に入ったなら、無難にかわせたわね。良かったね」
優子さんは裕くんと同期入社で、企画課長の東海林さんとも仲が良い。
社長秘書をしていて、大智小父さんの大事な右腕だ。
裕くんと接触する機会も多くて、少し嫉妬してしまうぐらい。
でも、優子さんは素敵な旦那様が居るから、友情なので杞憂なのだけど・・・。
裕くんは御曹司だし、見た目も中身もハイスペックなもんだから、肉食な女子社員が何人も狙っているし、内心はヤキモキしっぱなしだ。
いつ、素敵な女性が裕くんの隣に現れてもおかしくはない。
内心、モヤモヤビクビクしてる。
会社で再会して周りの視線もあるし、何だか他人行儀になってしまった。
裕くんも落ち着いていたし、きっと私の事なんて忘れてるんだろうな。
・・・寂しいけど。
もう少し、愛想よくしても良かったかも。
(裕くん・・・だよね?)
萌香の記憶にある裕一は小学生のままだが、大人の男性になっても面影を残してる。
当時は眼鏡はしていなかったが、その頃からインテリ系のイケメンオーラがあった。
桜葉一族の経営するこの【さくら堂】に入社した時から、顔を合わせるのは時間の問題だとは思っていたが。
会長であり、お祖父ちゃんの親友である功お爺さんとはちょくちょく顔を合わせてる。
裕くんのお父さんの大智小父さんとは、入社前に顔合わせ済みだった。
「どうぞ」
来客用のカップに入れた珈琲を出す。いつの間にか疎遠になってしまった裕くん。
びっくりするぐらい身長も伸びて、カップを持つ手も大きくて・・・昔は良く私の頭を撫でてくれたっけ。
「・・・うん、美味い・・・」
意外そうに、目を見張る裕くん。
「そーだろう、モカちゃんの珈琲は私の癒しなんだよ。桜葉部長も偶に飲みに来てよ、イケメンさんが居ると、ウチの女の子達も喜ぶし、ワハハ・・・」
困ったような、曖昧な表情で頷く裕くん。
田貫部長に自慢して貰ったけれど、私の取得なんてお茶汲みくらいだ。
田貫部長はパパの大学時代の後輩で、入社する前から奥様と二人、何かとお世話になっている。
会社でのお父さんみたいなひとだ。だから、多少の身内贔屓が入っていると思う。
裕くんの近くに居たいけど、仕事も有るし、後ろ髪引かれる思いで自席に戻る。
「都築さん、さっき事務の佐藤さんが頼んだファイル用意出来てる?」
「あっ、青山さん。わざわざ取りに来てくれたんですか?」
「うん、俺が使うやつだから、ついでだよ」
「営業さんは忙しそうなので、こちらからお渡しに行こうと思ってたんですが・・・」
「喫煙所に行ったついでだからさ、都築さんは気遣いさんだね。良い奥さんになりそうだなぁ」
さすがさくら堂ナンバーワンの営業マン、
サラッと誉める。
私は赤くなっているであろう頬を押さえて、どうしたらいいのかわからず愛想笑いで誤魔化す。
男の人は少し苦手。
特に青山さんの様に、容姿も実力も兼ね備えて自信に溢れているような人は・・・。
「都築さん、今度ウチの連中と飲み会しようよ。佐藤さんも参加するし、どう?」
「仕事中に女性を誘うのは感心しないな」
「桜葉部長!珍しいですね、総務に用事だっんですか?」
あからさまなお誘いをどうやって回避しようか戸惑っていると、裕くんが割って入ってくれた。
裕くんの後ろで、田貫部長がうん、うんと頷いている。
きっと、裕くんにそれとなく頼んでくれたのだろう。
いつもさり気なく助け船を出してくれる。
お誘い自体は迷惑という訳では無いのだが、同期で友人の佐藤花菜美ちゃんの想い人である青山さんなのが事の他、都合悪い。
「都築さん、珈琲美味しかったよ。ご馳走さま」
「え?都築さんの入れた珈琲飲んだんですかぁ?、良いなぁ・・・ズルいっす部長」
「田貫部長の気遣いでな。青山、今日は内勤なのか?」
青山さんに見えないように、後ろ手で戻るように合図してくれる。
小さく会釈してデスクに戻った。
何だか、小さい頃に戻ったみたいに胸の辺りがホッコリした。
「わざと、青山さんの注意を引いてくれたんだ・・・変わらないな」
「モカちゃん、どうしたの?」
秘書課主任の月野優子さん。
綺麗で、優しくて仕事のできる先輩だ。
同期の安井祥子ちゃんの指導係でもある。
田貫部長を筆頭に、総務部では殆どの人が私を「モカちゃん」と呼ぶ。
「営業一課の青山さんに誘われたんですが、桜葉部長に助けてもらいました」
「青山くんも懲りないわね・・・まあ、裕一が間に入ったなら、無難にかわせたわね。良かったね」
優子さんは裕くんと同期入社で、企画課長の東海林さんとも仲が良い。
社長秘書をしていて、大智小父さんの大事な右腕だ。
裕くんと接触する機会も多くて、少し嫉妬してしまうぐらい。
でも、優子さんは素敵な旦那様が居るから、友情なので杞憂なのだけど・・・。
裕くんは御曹司だし、見た目も中身もハイスペックなもんだから、肉食な女子社員が何人も狙っているし、内心はヤキモキしっぱなしだ。
いつ、素敵な女性が裕くんの隣に現れてもおかしくはない。
内心、モヤモヤビクビクしてる。
会社で再会して周りの視線もあるし、何だか他人行儀になってしまった。
裕くんも落ち着いていたし、きっと私の事なんて忘れてるんだろうな。
・・・寂しいけど。
もう少し、愛想よくしても良かったかも。