初恋のキミに約束を
インテリ眼鏡の求愛
食事もデザートの段階になると、お互いの雑談に切り替わる。

ふと視線を上げると、萌香が俯き加減になっている。

多分、今のこの状況に、少なからず動揺しているのだろう。

萌香にしたら、いきなりな話だ。

萌香の気持ちが揺れているのが、手に取るようにわかる。

見合い写真に成人式のを使う位だ、きっと萌香は何も知らされていないのだと思う。

何だか腹の底がざわざわとして、居ても立っても居られなくなった。

「萌香、少し散歩に行こうか?」

俺の提案に、祖父さん祖母さんだけでなく満場一致で賛成した。

「そうね、若い人達には退屈な話だろうから外の空気を吸ってらっしゃいな」

萌香の手を取り、中庭に出る。

ここで俺が一気に畳み掛けないと、萌香が逃げてしまいそうな気がした。

「今日は、突然済まなかった。いきなりで、驚いたよな?」

「桜葉部長は、今日の事・・・知ってたんですか?」

・・・桜葉部長かぁ・・・寂しいぞ、萌香!

「昨日、親父から知らされたんだ。俺も驚いたが・・・」

「・・・どうして私なんです?」

「萌香だから」

萌香はハッと顔を上げて、俺を見た。

動揺しているのだろう、瞳が揺れている。

「覚えてたの?」

萌香と視線を合わせて、口を開く。

「勿論。忘れた事なんて無かったよ。俺たちが幼い頃、萌香を一生一人にしないと約束したよな。覚えてる?」

コクリと頷く萌香。

「俺はその時から、ずっと萌香が好きだよ。ずっと萌香との未来を見据えて生きてきた。萌香を守ることが出来るように、俺が強くなる様に、勉強も、仕事も手を抜かず努力してきた。今まで疎遠になってしまったけど、自信を持って萌香を守れる男になったと思う。萌香のこれからの時間を、俺と共に生きて欲しい・・・俺と結婚してくれないか?」

「桜葉部長・・・」

「名前、呼んでくれないのか?ここは会社じゃない。今の俺は桜葉部長としてではなく、桜葉裕一として、都築萌香にプロポーズをしてる」

「・・・裕くん、私なんかで良いの?私は何も持って無いよ・・・」

「萌香が良いんだ。初めて会った時から、萌香しかいらない。祖父さんや親父たちがお膳立てしてくれて、こんな形でプロポーズするしか出来なくて済まない。でも、あの日公園で萌香と出会ったのは、運命だったんだって思ってる」

見る間に萌香の瞳から、涙が出てきた。

泣くほど嫌だったのだろうか?

凄く胸が・・・苦しい。

「私・・・私も裕くんが良い。私もずっと裕くんが好き・・・」

心臓に悪い。

やっぱり俺は、恋愛事は苦手だ。

「萌香、俺と結婚してくれる?」

「・・・はい。私で良ければ。私は裕くんとしか、結婚したくない・・・」

「じゃ、約束」

小指を差し出す。

萌香は泣き笑いで、自分の小指を絡ませた。
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