焦がれる夜に、あなたのキスを。【完】番外編更新
「いいよな、ここ。雰囲気もいいし酒もうまいし」
「何回来ても飽きないですよ」
「そんだけ気に入ってる店にいるのに、何で泣きそうな顔してんだ」
「えっ」
肩を竦めて困ったように笑う瀬戸さん。
自分ではちゃんと取り繕ってるつもりだったのに。
「用事でもできたから急いでたのか?」
「いや……用事っていうか」
「もし時間あるならさ。俺ともう少し飲んでいかないか?」
あの2人の姿を見たくないがために帰ろうとしたから、咄嗟に言い訳が出てこなかった。
それに先輩の誘いを断るのも気が引ける。
「私でよければ、大丈夫ですけど」
「決まりな」
瀬戸さんは職場にいるときより柔らかい笑みを浮かべて、自然に私の手をとりカウンターへ向かう。
瀬戸さんとは会社の飲み会でしか飲んだことがないから変な感じがする。