焦がれる夜に、あなたのキスを。【完】番外編更新
職場以外でも、こうしてサラッと気遣ってくれるところ、尊敬する。
「ありがとうございます。瀬戸さんには敵いませんね」
「お前より5つ年上だからな。当たり前だろ」
「あははっですよね」
瀬戸さんが私に送ってくれた言葉は『楽しい会話をしよう』で。
とても嬉しいしありがたいこと、なのに。
心の奥の奥で存在を主張し続ける感情は別のものだった。
それから少しの間仕事とは関係ない、とりとめのない話をしてから駅まで送ってもらった。
パチン、部屋の電気をつけると資料が散らばったローテーブルが視界に入って、なんだか現実に戻った気分になる。
ハイヒールをポイっと脱いで、セットしていた髪型も崩して、部屋着に着替えた。
「はー……」
琴美に今日あったことを全部話して楽になりたい。
どこにぶつけていいか分からない感情を、いつまで持て余せばいいんだ。
そう思いながら無意味にスマホをいじっていると。
「な、え?!え?」
画面に表示される、『成宮さん』の文字。