焦がれる夜に、あなたのキスを。【完】番外編更新

「欠点でもあるけど。底なしの優しさですね」

「……初めて言われた」

「面と向かってこういうこと言う人、いないだろうなって自分でも思います」

けど成宮さんが背中を押してくれたから。

一歩踏み出してみろって勇気をくれたから。

「俺さ。昔から親があんまり仲良くなくて。そのせいで人の顔色ばっか窺って先回りする癖がついてた」

ぽつり、ぽつりと紡がれる。

「それが習慣になってたから学校でも同じことしてて。そしたら、教師からもクラスメイトからも気味悪いって言われた」

子供の純粋さは時としてナイフになる。

特に小中学生あたりなら尚更だろう。今成宮さんはこうやって淡々と喋ってるけど、当時の心境を考えると。

痛い。

「で、親は結局離婚して。俺を引き取ってくれた親戚のおじさんがバーを経営してたんだ」

もしかしたらご両親が離婚したことも、彼女をつくらない、愛する人をつくらない根底にあるのかも。

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