焦がれる夜に、あなたのキスを。【完】番外編更新
「そうですかね……?よく、分かりません」
「まあ、気づかないでいてくれた方が俺的にはいいけど」
もしかしたら、あの時心の中で思ってたことが顔に出てたのかも。
「はは、そんな難しそうな顔しなくても。わるい、変なこと言った。酒のせいってことにしておいてくれ」
この話はおしまいとでもいうように軽やかに笑って、また歩き出す。
瀬戸さんの嫉妬したっていう言葉や今までの行動を顧みると。
ひとつの可能性が考えられる。
「でも……うん、ないない」
自惚れすぎだ。
誰に対しても優しい人なんだから、その延長線上だろう。
私と成宮さん、瀬戸さん、そして亜里沙さん。
部屋がお隣同士でお店の常連客とバーテンダー、会社の部下と上司、そしてクライアント。
危ういバランスで成り立っている気がする。
誰かが大きく踏み出せば、呆気なく均衡は崩れるだろう。
私はもっと表情に出さないようにしないとなぁ、なんて考えながら電車に乗った。