焦がれる夜に、あなたのキスを。【完】番外編更新
「今の和花菜さんに飲んで欲しいカクテルだったんだ、これ」
「今の私?どうして?」
「フローズン・マルガリータ。元気を出して、って意味」
刹那、濃紺のピアスがダークブラウンの髪の間からのぞいて綺麗に光る。
「和花菜さんがこのカクテルを飲んで少しでも笑顔になってくれたら、って」
「……い、今すっごい元気出ました!」
「あはは、早いなぁ」
本当ですって。
成宮さんのカクテルと言葉で、沈んでいた気持ちは急浮上。
ここに来ると、毎日仕事ですり減って疲れた心も癒されていく。
成宮さんはバーテンダーだから、私以外の人にも同じように今みたいな甘い台詞を投げかけるし相手に合わせてカクテルを振る舞う。
だってそれがお仕事だ。
分かってる。
分かっているけれど、心の奥底で燻る熱に気づいてしまった。