焦がれる夜に、あなたのキスを。【完】番外編更新
「あははっ!別人だと思ったでしょう?」
「亜里沙さんはびっくりしなかったんですか?」
誰だってあの変貌ぶりは驚くにきまってる。
「私は海外の修行先のお店で会ったとき、なんとなく違うなって思ってたの」
そういうの気づくのよね、と悪戯な表情を浮かべる。
「向こうは頑なに態度を崩そうとしなかったけど、しつこく通って話しかけた」
そうしてるうちに成宮さんも気を許してくれて、友達上の関係になったとか。
「あの時の樹季、今よりも……なんていうか、人との距離をとってて」
私が知らない過去の話。
また、そのピースが増えていく。
過去にはどう頑張ったって戻れない。
だから亜里沙さんが昔の成宮さんを愛おしそうに語る姿を、羨ましいと思ってしまう。
「子供の頃から苦労してきた分、ここでも失敗しないようにって気を張ってたんでしょうね」
前に成宮さんから聞いた、幼い頃の話を思い出す。
「でもひとりで何でも抱え込むって限界があるじゃない?」
「はい。話を聞いてくれるだけでもいいから誰か近くにいてほしいって思います」