焦がれる夜に、あなたのキスを。【完】番外編更新
「ここはお店の外よ。バーテンダーとしてじゃなくて樹季として答えて」
そう言われて、成宮さんも押し黙る。
「私はね。樹季の彼女になれなくても、誰よりも傍にいられればそれでいいと思ってた。一番の理解者でいられれば、って」
声の震えを抑えるようにして話す。
「……うん」
「樹季が嫌だっていうことをさせないために。自分を、そばに置いてもらうために」
成宮さんの瞳が揺れる。
「でもそれは建前で。本当は、出会ったときからずっと、私のことを樹季に愛してほしかったの」
あふれ出た本音。
愛してほしかった。彼女にしてもらいたかった。
「亜里沙、俺は」
「樹季は彼女をつくらない、だったら彼女の『代わりとして』自分が一番近い位置にいればそれでいいって言い聞かせて」
告白して振られて、その特別な関係を失うくらいなら。
「でもいつか、愛してくれたらって気持ちも変わらなかった」
お店からこぼれる明かりで、頬を伝う雫がひかった。
ぽろぽろと流れて、アスファルトを濡らす。