焦がれる夜に、あなたのキスを。【完】番外編更新
「これ!亜里沙さんの荷物を届けようと思って」
いそいそとバッグと畳んでおいた上着を渡す。
「ありがとう、和花菜ちゃん。ね、樹季」
「うん」
「もし、その樹季が気になってる相手とうまくいきそうになかったら」
私のところに来ていいわよ、と亜里沙さんはウィンクをひとつ。
「あ、あの!亜里沙さん」
「じゃあね。私、完全に諦めたわけじゃないんだから」
亜里沙さんは一瞬成宮さんを見て泣きそうな顔をして。
「油断しないでよ」
それから、振り返らずに駅のほうへ向かっていった。
「……成宮さん、ごめんなさい。盗み聞きしてしまって」
「はは、どこから聞いてた?」
『最初からです』とは言い出せずにいたけど、成宮さんにはバレてしまうんだろう。
「その顔。全部聞いてたな」
やっぱりばれた。
「いいけど。亜里沙は気づいてたっぽいし」