焦がれる夜に、あなたのキスを。【完】番外編更新
振り返ると、瀬戸さんがわずかに強張った顔でこちらを見ていた。
「あ、これは……」
「申し訳ございません。亜里沙さんをお見送りしていたら、和花菜さんが上着を届けてくださったんです」
私が狼狽していると、成宮さんがいたって自然にごまかしてくれる。
「急に3人が出ていくからどうしたのかと思って。びっくりしたよ」
「少し話をしていたせいで戻るのが遅くなってしまいました」
成宮さんの言葉に、『ならいいんだけど』と言って瀬戸さんは私の腰にやんわり手を添えた。
待って欲しい、これじゃ言いかけた話の続きはどうすればいいんだ。
「和花菜、戻ろう。そろそろ時間だろ」
「そう、ですね」
成宮さんは一瞬何かを考えるように視線を逸らし、それから先回りしてドアを開けてくれた。
成宮さん、私はまだあなたの返事を聞けていません。