焦がれる夜に、あなたのキスを。【完】番外編更新

振り返ると、瀬戸さんがわずかに強張った顔でこちらを見ていた。

「あ、これは……」

「申し訳ございません。亜里沙さんをお見送りしていたら、和花菜さんが上着を届けてくださったんです」

私が狼狽していると、成宮さんがいたって自然にごまかしてくれる。

「急に3人が出ていくからどうしたのかと思って。びっくりしたよ」

「少し話をしていたせいで戻るのが遅くなってしまいました」

成宮さんの言葉に、『ならいいんだけど』と言って瀬戸さんは私の腰にやんわり手を添えた。

待って欲しい、これじゃ言いかけた話の続きはどうすればいいんだ。

「和花菜、戻ろう。そろそろ時間だろ」

「そう、ですね」

成宮さんは一瞬何かを考えるように視線を逸らし、それから先回りしてドアを開けてくれた。

成宮さん、私はまだあなたの返事を聞けていません。

< 214 / 242 >

この作品をシェア

pagetop