焦がれる夜に、あなたのキスを。【完】番外編更新
「でもさぁ、私のいとこも結婚してるんだけど危ういんだよねぇ」
「うそー好きな人同士なのに?」
「ほんと不思議だよね。お互い愛し合って付き合ったはずなのにさ」
何故だろう、会話を聞いていてサッと血の気が引いていった。
別に自分がそうなったわけじゃないのに。
せっかく付き合っても別れる人は世の中にいくらでもいるはずだ。
分かっているけど、もし、自分と成宮さんがって考えたら。
「……意味ないのに」
そもそも付き合ってるわけじゃないんだ。
想像したところで、たらればの話でしかない。でも相手が好きだからこそ不安に駆られる。
成宮さんにあの日の続きを話さなきゃいけないっていうのに、今更。
当たり前の現実が、目の前に転がってきた。
そんな感じの、漠然とした不安。
こんなことで心が揺さぶられるとは思わなかったな。
「仕事、やらなきゃ」
自分に言い聞かせるようにして、ペチッと頬を叩いて資料に向き直った。