焦がれる夜に、あなたのキスを。【完】番外編更新
「ちょ、成宮さん」
「なんでお前はこう、雨に濡れたがるわけ」
「いや不可抗力というか」
「ほら、大人しくしてろ」
そう言って拭くためにぐっと距離を近づけられて、成宮さんと肌が触れた瞬間。
「……っ」
半歩、後ろへ下がってしまった。
昼間のこともあって、頭の中が整理できてない状態でこれ以上近づいちゃだめだ。
そう思ったせいで、反射的に体が動いた。
「……ただ拭くだけだ。怖がんなって」
成宮さんは人の機微に敏感だ。
ちょっとした表情の変化とか空気で、私が考えてることなんてすぐに分かるんだろう。
はいこれで終わり、とササッと拭いてくれて、『じゃあおやすみ。かぜ引くなよ』とだけ言って扉を閉めようとする。
「あ、なるみやさ」
手を伸ばす前に、無情にも扉は閉まってしまった。
「タオル」
このタオル、どうすればいいんですか。
水分を含んだせいでより成宮さんの優しい香りが強くなるそれ。