焦がれる夜に、あなたのキスを。【完】番外編更新
確かに瀬戸さんは頼りがいがあって優しいし、正直な人だ。
普通なら断る理由なんてひとつもない。
「和花菜」
瀬戸さんが先を促すように名前を呼ぶ。
ここまできても反応を示さない成宮さんに、不安がつのる。
私がこのカクテルを飲んでもいいってこと?
今まで一緒に過ごした時間は。あの夜の話の続きは?
「絶対に幸せにしてみせるよ。和花菜」
私が瀬戸さんの告白をのんだら、成宮さんはどんな顔をするのか。
グラスを手に取って、ほんの少し口元へ近づけてみる。
頭の中で彼との思い出が走馬灯のように駆け巡る。
私は……私が好きな人は。
―――そう思って、グラスを離そうとしたと同時に。
「和花菜さん、お待ちください」
自分の手に誰かの手が重ねられた。骨ばった男っぽい、でも綺麗な手。
「瀬戸様、大変恐縮ですが今から和花菜さんをお借りしますね。というか返せないと思いますが」
「は、君、何言って」