焦がれる夜に、あなたのキスを。【完】番外編更新
「………んん?」
ピタリと足をとめた。
やけにスタイルが良い男の人が真剣にフルーツを手に取って選んでいる。
そんなじっくりグレープフルーツ見てどうしたの。
珍しい人もいるんだなと思いながら近づき、私もフルーツを選ぼうとしたら。
「……!?」
な、何で成宮さんがここにいいるんですか!!
驚いてフルーツコーナーから距離をとった。
ふいに隣を見た瞬間、忘れるわけがない端正な顔が近くにあってびっくりしてしまった。
黒縁のメガネをかけているけど、綺麗な顔は隠しきれていない。
成宮さんの方は全く気づいていないようで、グレープフルーツの次はレモンを品定めしている。
ずっと見つめられている果物が羨ましい……って、何を考えてるんだ私は。
いつもはバーテンダーとしてきっちりセットされた髪も今日は軽く弄ってあるくらいで、服装もゆるいネイビーのトップスに黒のスキニー。
服装が違うだけで大分雰囲気って変わるんだなー。
キッチリした成宮さんも素敵だけど、私服も最高。
どうしよう。仕事中ではないだろうし挨拶くらいしても、大丈夫だよね?
『成宮さんいらっしゃったんですね~今気づきました』っていうテンションで話しかけてみよう。
一呼吸おいて何気なくフルーツコーナーに近づき、成宮さんの傍まで行く。
「……あ、あれ?成宮さんですよね?」
「………」
でも成宮さんは反応なし。ただフルーツを見つめ続けてる。