焦がれる夜に、あなたのキスを。【完】番外編更新
周りを見回すと、結構男女共にお客さんがいて賑わっている。
「ご注文は何になさいますか?」
「じゃあ、ジン・トニックで」
「かしこまりました」
マスターは微笑んで、手早くシェイカーなどを用意。
そんなに色々なバーに行ったことがあるわけじゃないけど、それでも手つきで熟練の人ってことは感じ取れた。
ゆったりとしたクラシックが、心を落ち着かせてくれる。
「お客様は……お名前を教えていただいても?」
「清水和花菜です」
「和花菜ちゃんは、仕事帰りかい?」
「はい。広告代理店で働いてるんですけど、仕事終わってそのまま帰ろうとしたらここが気になって」
私と話しながらでも手早く、かつ丁寧にカクテルを作りグラスに注ぐ。
一切無駄のない動きに目を離すことができない。
「気づかずに通り過ぎる人もいるから、和花菜ちゃんが見つけてくれて嬉しいよ」
出来上がったジン・トニックが差し出された。
オレンジの光に照らされながら、トニックウォーターの炭酸の泡がグラスの中で踊る。
いただきます、といって一口飲むといい香りが鼻を抜けた。