焦がれる夜に、あなたのキスを。【完】番外編更新
「差し色に紺色があるからこそ一層赤が映えますよね……これ、あのキャンペーンの背景に使えそう。コンセプトにも合って…ひゃっ」
「はいそこまで」
つい来週から動き始める案件のことを考えていたら、成宮さんの指が唇にあてがわれた。
毎夜美味しいカクテルを作り出す細い、けれど骨ばった指が。唇に。
「今日の約束、忘れたのか?」
ん?と首を傾げてみせる成宮さん。
「わ、すれてないです」
「ほんとかよ」
「でも、成宮さんだって『この色合いのカクテルあるよな』とか『今度作ろう』とか思いませんでした?」
「……思ってねぇし」
「嘘」
成宮さんも大概仕事バカだってことは知ってる。
「じゃあ今から考えるのはナシな」
「はい、普通に景色を楽しみましょう!」
成宮さんは珍しく興奮した様子でスマホで写真を撮っていた。