焦がれる夜に、あなたのキスを。【完】番外編更新

「探してていいよ。髪、縛ってやる」

自分でやります、そう言いかけて、口をつぐんだ。

だってこんなことしてもらえるの、今日が最後かもしれない。

成宮さんの手が、優しく髪を梳いていく。

なんとなく手つきが慣れてる気がするのは、私の勘違いだろうか。

「ほいできた」

「ありがとうございます、探しやすくなりました」

「俺もシーグラスさがそ」

ふたりして海岸を歩きながら綺麗な欠片を探した。

まるで彼氏彼女みたいだ。

みたい、としかいえないのが切ないけど。

「じゅうぶん集められたので、戻りましょうか」

「そうだな、暗くなってきたし」

あと少しで太陽が地平線に沈んでいく。ほかの観光客も帰ろうとしている人が多くなってきた。

< 88 / 242 >

この作品をシェア

pagetop