焦がれる夜に、あなたのキスを。【完】番外編更新
久しぶりにはしゃいだなー、なんて思いつつ浜辺からアスファルトの道へ戻るため階段をあがる。
「……っうわ?!」
「っと。あぶね」
足を滑らせそうになった瞬間、ふわりと鼻腔をくすぐる甘い香りに包まれた。
ゼロ距離で感じる体温に、頭が追いつかない。
「大丈夫か?足」
「っだ、だだ大丈夫です、ごめんなさいごめんなさい!すぐ離れます」
とにかく急いで離れようとした私の手をとって、ゆっくり体勢を整えてくれた。
「ありがとうございますそして大変失礼いたしました」
「そんな深刻な顔しなくても。転ばなくてよかった」
甘い蜜を垂らしたような双眸で、見つめないでほしい。
心臓の鼓動が落ち着かないまま江ノ電に乗って鎌倉に戻り、車に乗った。
「んじゃ、帰りますか」
「はい。帰りも運転よろしくお願いします」
昔学生時代にデートをしたことがない、わけじゃないけど。
その時とは何もかも比べ物にならない。
それに最近はもっぱら平日も休日も仕事って感じで、今日みたいなことが久しぶりすぎて。