藍と未来の一つ屋根の下
「私は…」


隣に座る有里華の肩にもたれると、アロマの香りが未来を包んだ。

ママは出勤する時いつも香水をつけるけど、お風呂上がりのママからは未来の好きな自然の香りがする。


「藍がそんな事するなんて思えない」


か細い声で未来は口にした。


昨日の純の言葉も頭をよぎる。


[あいつサークル仲間の一人と付き合ってたんだよ。俺ずっと気付いてなくて知らなかった]


かき消すように未来は手元の炭酸水を飲む。


「じゃあ、やってみなよ」


有里華は自分に首をもたげた未来の頭を撫でた。


「全力で好きになって、傷つくのも経験だ」


「藍が…」


未来が涙目で有里華を見上げると、


「ごめん、藍ちゃんが浮気してるなんて言ってないよ」


と有里華は未来の頭をポンポン叩いた。


「ミクが本気で好きなら一回ぶつかっておいで。結果はどうでも、あんたは皆んなに愛されてるんだから」


未来が有里華の腕の中で頷いた時、玄関の扉にガチャガチャと鍵が差し込まれる音がした。


「王子タイミングいいな」


シャンパングラスを持ったまま有里華が言う
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