藍と未来の一つ屋根の下
都心の夜景が一望できるレストランで、未来は見知らぬ男性と向かい合っていた。
隣には母の有里華。


「未来ちゃん。有里華からいつも話は聞いているよ」


男はかずオッちゃんと同じくらいの年齢だろうか。体型は恰幅が良く、短髪の髪には少し白髪が混じっている。


「学校はどう?勉強は楽しい?」


とりとめのない質問に、未来は戸惑う。


外食先でいつもは真っ先にお酒をオーダーする有里華が、この日はジンジャーエールを頼んでいた。


「ワンピース、似合ってるね。有里華の娘さんなら花柄が似合うと思ってね」


寺田と名乗るその男性が、いつも未来にもプレゼントをくれる有里華の常客だということを未来は悟る。


「有里華は君のことが本当に好きでね、君の話ばかりするんだよ」


運ばれてきたホタテと伊勢海老のカクテルを口にして、寺田は終始笑顔だった。


ハマグリとアスパラのポタージュに続いて、 スズキのポワレが運ばれてくる。


今日のママは言葉数が少なかった。
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