藍と未来の一つ屋根の下
「いつ引っ越すの?」


「ママの身体のことがあるから、なるべく早いうちにだって」


「そうか」


夜の公園に沈黙が流れた。


「藍」


「ん?」


「行くな!とか言ってよ。俺の側にずっといろとか。そういうの」


「言ったらおまえ行かねーの?」


「行かない」


もちろん未来は、そんなことは無理だとわかっている。


「ずーっと藍の側にいる」


未来は藍の肩に頭をもたげた。


「この公園よく来たな」


未来の頭の上でずっと聞き慣れた藍の声が響く。


「お散歩の時間でしょ」


「なにやってたか思い出せねえなぁ」


「ばーちゃんに花の名前教えてもらった」


「ばーちゃんやたら花に詳しいよな」


二人の会話がまた途切れる。
夜の風が未来の身体を冷やす。


「帰るか?」


「帰りたくない」


「ホテル行くか?」


「いいよ」


「ばか冗談だよ」


「…朝が来なければいいのになぁ」


「そうだな」


藍も未来も帰らなければいけない事は分かっている。でも二人はずっとその場を離れられなかった。
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