藍と未来の一つ屋根の下
「藍って運転上手かったんだね」


「おまえとは違うんだよ」


たしかに、未来も今月免許を取得したけど、こんな風にレンタカーを運転できる自信はまるでない。


「引っ越しは親父が運転するって聞かなかったんだけどな」


車窓から見る駅前通りは桜並木が満開だった。


【迎えにいくと約束したから】


今日藍が未来の引っ越しのために、自分で車を出した理由を未来は知っている。


もちろん、藍はそんなこと口にしない。


「あ、ママからLINEきた。ねえ、凛の動画きたよ!ねーねーどこって言ってる」



藍に16歳離れた未来の妹、凛の写真を見せようとすると、藍は「運転中だばか」と言った。


「じゃあ声だけ聞いて。ねえ可愛いでしょ凛」


「可愛いな」


「ねえ藍さ、私には一度も可愛いって言ったことないよね!?」


「はいはい」


大学に進学したら二人で暮らす。


それが藍と未来の約束だった。
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