藍と未来の一つ屋根の下
「忘れた」

「嘘でしょ」

「聞いてどうすんだよ」

「別に」

未来もバタンと身体を倒す。

見慣れた天井の木目が目に入った。

「彼氏ができたら藍の部屋に来れなくなるかな」

「知らねえよ」

「ばーちゃんのご飯食べれなくなる?」

「飯だけ食いにくれば?」

「私に彼氏できたらどうする?」

藍は大きく息を吸ってまた吐いた。

「知らね」

「えー冷くない?」

「俺に関係ない」

「藍に彼女ができたら私どうしようかな」

「どうすんの?」

「どうしよう」

少しの間ゆっくりと沈黙の時間が流れた。

夕方の湿った風が窓から2人の頬を撫でていく。

「藍」

「…」

「寝ないでよ」

「起きてるよ」

「返事してよ」

「したじゃん」

窓の向こうから男の子と女の子の子供の笑い声が聞こえた。「先生ありがとうございましたー」

今「お星さまのおうち」に預けられている2つ違いの兄弟だろう。

未来は目を閉じて深呼吸をする。

「藍」

「腹減ってきた」

「…手繋いでみない?」

「なんで」

「別に。嫌ならいいけど」

「田島先輩に言えよ」

未来は天井を見つめたまま、お腹に置いていた右手を手のひらを上にして身体の横に置く。

藍も天井を見つめたまま、左手を未来の手のひらの上に置いた
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