藍と未来の一つ屋根の下
未来は右手の指を藍の指の間に通す。

「藍の手こんなに大きいっけ?」

「いつの話してんの?」

「昔は手繋いでたじゃん」

「だからいつの話だよ」

小学校あがるまでは、藍と未来は毎日手を繋いで、てる子ばーちゃんと公園まで行った。

開け放したままの窓から入る5月の風が冷たくなってくる。

「寒くなってきたね」

「だな」

「…もうちょっとこうしてていい?」

「おまえ手の体温高いな」

「藍」

「なに」

「なんでもない」

「なんだよそれ。言えよ」

一階のキッチンからは、小気味好いリズムで包丁でまな板を叩く音が聞こえる。もうすぐばーちゃんのご飯の時間だ。

「藍に彼女が出来たら教えてね」

「なんだよそれ」

「だって藍に彼女が出来たらもうこうやって手繋げないじゃん」

「今ならいいのかよ」

「さあ?」

「なんだよそれ」

藍と未来は同時に吹き出した。手を繋いだままの2人の笑い声が部屋に響いた。

笑いながら、藍が未来の手を握り返した。

しばらく彼氏はいいかな。この時間があればいい。
未来は胸の奥が暖かくなるのを感じていた。
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