藍と未来の一つ屋根の下
「ミクちゃんのママってほすてすなんだって!」

未来が小学一年生のとき、放課後の教室でクラスメイト数人から声をかけられた。

「ほすてすってなに!?」

「夜のお仕事なんだよ」

「えっちなことするんだって!」

きっと保護者が噂したんだろう。たしかに入学式の時、未来のママは誰よりも目立っていた。

黒いスーツはミニスカートで、胸の谷間が見えるほど空いている。側のピンヒールと巻き髪を高く盛ったそのいでたちは、まさに「出勤前」

でも未来は、ママが誰の保護者よりも一番綺麗だと思った。なにより、一番の美人だ。

てる子ばーちゃんと、その息子で藍の父でもある和夫オッチャンも入学式に来ていて、未来が呼ばれると手を振ってくれた。オッちゃんなんて泣いてた。

「えっちなママえっちなママ!」

教室で囃し立てる男子に、未来は下を向いて俯くだけだった。えっちじゃない。ママのお仕事は「おきゃくさまとお話しするおしごと」だってママは言ってた。

「うるせえ黙れ!!」

その時教室に入ってきたのは藍だった。
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