藍と未来の一つ屋根の下
「好きだもん。藍のこと」


言ってしまったら何かが壊れてしまう気がして、ずっと言えなかった言葉。


一度口にすると、未来は驚くほど素直になれた。


「大好き」


ずっと言葉に出来なかった曖昧な気持ちは、一度口に出すととてもシンプルだった。


藍は何も言わずにそのまま未来を抱きしめる。


「藍」


「なに」


「なんか言ってよ」


「なんかってなんだよ」


「女の子が好きって言ってるじゃん。なんか言うことあるでしょ」


「ああ」


藍の呼吸が未来に響く。



「俺はやらねえかな」


「やらない?」


「さっきの質問だよ」


「好きな人じゃなくてもやれるかってやつ?」


「うるせえなぁ」


「言ってよ」


「なにを」


「好きって言って」


「だまれ」


その瞬間なにが起こったのか、一瞬未来には理解出来なかった。


自分の唇に触れたのが藍の唇だってことを理解したのは、暗闇の中で藍と目が合った時だった。
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