藍と未来の一つ屋根の下
「誰だよおまえ」


ひるむクラスメイトに、「うるせえだまれ」そう叫ぶと、藍は未来の手を掴んで立たせる。


「あ、こいつらラブラブだ」


男子の一人が藍と未来を囃し立てる。


「未来をバカにすんな」


そんな風に怒鳴る藍を見るの初めてだった。


「ケンカはやめなさい」


誰が呼んだか、女の担任がクラスに駆けつける。


「こいつらが未来のママをバカにした」


藍が言うと担任は困った顔をしてこう言った。


「いい?みんな。未来ちゃんのお家は特別な事情があるの。皆んなで仲良くして協力しないとね?」


***


「どしたー!?」


美咲のつけまつげに覗き込まれて未来は我にかえった。


「んーなんでもない」


うちに特別なんて何にもないのに


あの頃から未来はいつもそう思っている。
メイクポーチを逆さにしてメイク道具を机の上にばらまくと、カナやリー子も集まってきた。


「ミクのバイトないならカラオケ行こうよ。リー子がバイトしてるとこ」


「私今日シフトなんだけどー!」


Diorのリップグロスを塗りながらリー子が口を尖らせる。


「んじゃサービスしてくれんじゃん」


美咲はいつも調子がいい


「ミクそろそろ彼氏できた?」


メイクをしながら美咲が未来に質問する。

美咲の口癖は「彼氏できた?」か「彼氏とどう?」だ


未来はだまって首を振った。


「うっそこんな可愛いのにあり得なくね!?」

「ユッキもミクののことかわいいって言ってた」


ユッキはリー子の彼氏。


その時未来のスマホが鳴った。
藍からのLINEだった。
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