さよなら、Teacher
「奥様、大変お世話になりました」
いつもより少し早めに丹下家を訪れた恵は、夫人に挨拶をした。
「これから、どうするの?ヒロは?」
恵は、ただ首を横に振った。
「恨んでくれたらいい。嫌いになってくれてもいい。
次に会う時は、知らない者同士です」
「そんな…」
夫人が声を震わせ、滲む涙をハンカチでおさえた。
その時だった。
「ただいまー。
あ、メグ、今日早いじゃん。
何?母さん、泣いてるの?
そっか、今日、カテキョー最後か!」
光英学院高校の、ブレザーの制服を着たヒロが帰ってきた。
「そう。広宗くんだけの『先生』は、もう、おしまい」
「なーんか淋しいなぁ。
そうだ!見て、これ!
期末テストの英語、なんと、81点!ついに80点台叩き出したぜっ!」
「すごい!」
思わずいつものようにヒロを手放しで褒めそうになる。
だが、恵はぐっと言葉を飲み込んだ。