さよなら、Teacher
「やっぱ、メグミ先生!
髪型違うし、オシャレしてるから気づかなかったよ〜
これからデート?」


ヒロの家に行く時はいつも長い髪を一つに結び、先生らしい格好をしていく。だが、今日は髪を垂らし、流行りのスカートスタイルだった。

恵は、ヒロの問いに答えられず、手にしていた空き缶をこっそり後ろ手に隠して、小さく笑った。


「ヒロぉ、だれぇ?」
「オレのカテキョー」


ヒロの連れていた女の子は、恵の頭からつま先までサッと一暼すると、口の端を歪めてバカにしたようにに笑った。


「可愛い彼女ね、ヒロくん。…じゃ私、急ぐからまた、明日ね」

恵はそう言うだけで精一杯だった。言い知れぬ孤独感に苛まれ、早足でその場を去る。


暑さが残る熱帯夜。恵は、額の汗を拭いながら再びアパートへと向かう。


ーこれが憧れてた都会の生活、なのかな…?


恵は何も無い自室のベッドに倒れ込む。すると涙がじわりと、にじんできた。


開け放った窓からは風も入ってこない。クーラーなど無い部屋は暑く、空気が恵の体にからみつく。

そのまま、恵はいつしか眠ってしまった。




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