さよなら、Teacher
「あ、いけない、もうこんな時間だわ」
恵の契約は1時間。だが、いつも大抵2時間近くになる。時間には縛られないようにしていたのだが、この日は、プールの監視員のバイトが入っていた。
「何、センセ、デートの予定でも入ってんの?」
「違う、違う、プールのバイト。ヒロくんの英語の日は入れないようにしてるんだけど、今日は人手が足りなくて、どうしてもって言われちゃって…ごめんね」
「へぇ、プール」
「ヒロくん、プール、好き?」
「泳ぎは好きだけど、人が沢山いるとイヤでさ…うちにもプール作って欲しかったんだけどねー」
さすが金持ち。冗談には聞こえず、恵はつい、笑ってしまう。
「そうね、今は夏休みだから、結構混んでるかな。でも、うち、あんまり知られてないけど、夜9時までやってるの。夜は、ちょっとしたビアガーデン風でカップルもいっぱいいるわ。
よかったら、来てみて」
恵は、招待券を取り出してヒロに渡した。
「へー」
「あ、でも、ヒロくんは未成年か。カクテル風ソフトドリンクもあるから、彼女と来てみてね。じゃ!」
時計を見て恵は慌てて飛び出して行った。