さよなら、Teacher


未亜に渡された地図を頼りに恵は有名な高級住宅地を歩き、そしてその中でもとりわけ大きな屋敷の前で足をとめた。


「…すごい…」


しばし、絶句。外観だけでも圧倒されたが、中へ通されても、なお驚くばかりだった。

緊張する恵を面接するのは、母親。振舞いが優雅で、優しそうな美しい人だ。


「未亜先生のご紹介なら、間違いありませんね。お願いしたいのは、次男で高校2年の広宗(ひろむね)です。
最近は、学校もサボりがちで…色々お手数かけると思いますが、よろしくね」

「は、はい」
恵は慌てて返事した。こんなお金持ちの息子だなんて、どんな子なんだろう


「ヒロは?」
「それが…どちらにもいらっしゃらなくて」
「まぁ、今日は新しい先生がいらっしゃるからって言ったのに…」
夫人とメイドの女性が深々とため息をつく。


ーこれは、難物かも。


「ごめんなさいね、先生。少し、待ってもらえるかしら。くつろいでらしてね」
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