さよなら、Teacher
「ホントは、焼肉をガツンと食べたいんだけどさぁ、においがするだろ?
この後バイトならやめとこう」
大翔の提案で、二人は回転寿司に入った。
ーほら、大翔は優しい。ちゃんと私の事を考えて気遣ってくれる。
恵は、自分に言い聞かせた。
まだ夕方だというのに、大翔の食欲は旺盛だ。カウンターにどんどん皿が積み重ねられていく。
恵は、回転寿司が好きではない。カウンターに並んで座ると、慌ただしく食べざるを得ない。ゆっくり話をすることもままならないからだ。
案の定、ろくに話も出来ない。
「あー食った!お、恵、そろそろ時間だろ?行こうぜ」
食べながらも時間だけはきっちり確認していた大翔。
結局、恵はほとんど食べず、話も出来ず勘定だけを済ませて店を出る羽目になった。
「じゃあな」
大翔は爽やかに笑い、恵に手を振って背を向けた。
恵は腕時計に目をやる。5時半を回っていたが、ここからならヒロの家まで30分もあれば着く。それほど急がなくてもいいのに。
時間に追われいるのは自分じゃなくて、大翔のような気もする。