さよなら、Teacher
仕方なく恵も歩き出そうとして気づいた。
お土産を渡すのを忘れていた。


今ならまだ、追いかければ間に合う。


恵は大翔の歩いた方向へ走り出した。人ごみの中、彼の背中を見つける。
彼は急いでいるらしく、珍しく小走りをしていて、なかなか追いつけない。

大翔は、どうやら駅に向かっているようだ。


なかなか追いつけないと思っていると、不意に大翔が足を緩めた。
そして、何かを探す仕草をする。


「ん、もう、遅いっ!」
「悪い、遅れた」

駅前広場で彼は一直線にその女性の元へ走り寄って行く。


恵は、思わず足を止めた。


恵に気づかず、大翔はその女性の肩を抱いて平謝りしている。

「ごめんって。未亜。今日もたっぷりと可愛がってやるからさ」

そう、大翔に肩を抱かれているのは、恵の友人、未亜だった。


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